TTE避難民支援協会では今年度より、日本国内における避難民支援と並行して、「より必要としている人に必要な支援」を行うべく、ウクライナ本国への支援ならびに隣国における避難民支援を模索してまいりました。
現地在住の日本人に協力を仰ぎ、ポーランド政府の認可を受け、ウクライナ本国の前線地域やポーランド国内の避難民施設に物資を届けている支援団体”IN NEED”をご紹介いただきました。”IN NEED”は道路標識製造会社を家族経営している一家が侵攻をきっかけに想いひとつで多くの人の協力を得ながら支援活動を行っている団体でした。私たちと重なる部分があり、信頼できる実績を残している彼らとの協業を決めました。
また今回は、国際ロータリー第2750地区のご協力を得ながら、特にウクライナ本国で必要とされている物資(タオル、シーツ、毛布、乾電池、充電器)を支援いたしました。5月下旬に協会スタッフ2名がポーランドに赴き、IN NEEDへ支援物資を配達、東部ルブリン県内のウクライナ避難民支援施設の視察を行い、継続的な支援の実施について協議してまいりました。
これからも、その時々の状況に合わせて、必要な支援を実施してまいります。
『倉庫視察』
InNeedは、“必要とされている(= in need)”支援を届ける活動をしている、非営利の慈善団体。基本的に、食料、衣服、薬などの生きるために必要な一般物資を、大変な状況下に置かれている人々に提供する活動を実施。敷地内の2つの倉庫のうち1つをInNeedの活動の為に支援物資保管に使用している(もともとは2つとも家業である道路標識製造用の物資を保管するために使用されていた)。
今回の支援物資はエネルギー不足の際に重宝される品々。エネルギー危機は去年も訪れ、今年もウクライナでは冬季の深刻な電力不足が起きると予想されている。また、ウクライナ東部前線地域ではインフラの破壊に伴い電気が使えないエリアが多く、家電やスマートフォンなどの充電に電池が非常に役に立つとの事。ウクライナの発電が攻撃を受けた際、電力不足の問題が深刻化。特に、都市部はセントラルヒーティングの為に全家庭で暖房が使えない状態になった。
『避難民施設訪問』
現在120名が入居、うち40名が子どもたち。大人たちは働き、子どもたちは学校や幼稚園に行き、通常の生活を送っている。子どもたちの適応能力は高く、皆ポーランド語を早速習得している。学校は通路を挟んで目の前にあり、同じクラスに少なくとも2人以上はウクライナ避難民がいる為、困ったことがあったら相談し合えるような環境になっている。その為、子どもたちがトラウマや精神的ストレスで白黒の絵を描くといったようなことは見られないとの事。
精神的なケアについて、セラピーは時々実施されるものの、ポーランド国内では一般的にセラピーは高価(数年前の価格で1時間あたりPLN160、ポーランドの平均月給はPLN6,900)であり、なかなか利用することは難しいとの事。どうしても政府の支援は衣食住や身体的な医療面を優先となるので、精神的ケアには補助金が回って来ていないのが現状。
『スタッフ談話』
ポーランド国内は訪れてみると大変長閑で平和、人々も穏やかで気候も心地よく、本当に隣の国で戦争が起こっているとは想像しようとしてもやはり現実として受け止めきれませんでした。そしてそれはきっとウクライナ国内でも同じだったはずだと思うと、胸が痛みます。実際に支援しているポーランドの方々は、少ない政府の援助の中、自分達の資産や身銭を切ってまでウクライナ避難民を支援しようとしている方が本当に多く、街中にも多くのウクライナの国旗を見かけました。しかしポーランド自体もまだまだ経済的に豊かな状況とは言えず、戦況も長期化し、終戦したとしても多くの家やインフラが壊されてしまった中ですぐに戻れない人も多い中、財政的に苦しいのが現状かと思われます。ウクライナ避難民施設を2カ所視察させていただきましたが、生活水準・支援水準も大きく異なりました。故郷であるウクライナに帰りたい気持ちや、子どもたち、そして自らの将来を心配する気持ち、また狭い場所に住むことに大きなストレスを感じている点などは共通するところもありましたが、支援を実施する上で、一つの箇所だけを見て判断するのではなく、やはり一つ一つの施設、一人ひとりの人にしっかり焦点を当てる必要性があることを改めて感じました。支援内容については、物資だけでなく、今後いかに生活を取り戻していけるか、という視点も考えていく必要があると強く感じました。そんな過酷な状況の中でも、温かく私たちを迎え入れ、辛い話も打ち明けてくれた人々、本当にかわいい笑顔で「ありがとう、大好き」と言ってくれた子どもたちには感謝しかありません。